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2011年4月13日水曜日

ホームインスぺクションとは? その光と影

すでに、何人かの方が指摘していることだと思うが、私は私なりの解釈で、述べていきたいと考える。

例えば、中古住宅を購入する際、その住宅の安全性やどんな瑕疵が存在するのかなど、知りたいと思うのが人情だし、売る側も余計なトラブルを避ける意味でも、それらを積極的に明らかにしたいと考えるだろう。

最近、ホームインスペクションなる言葉を耳にする。日本語にすると、住宅診断ということなのだそうだ。なぜ、わざわざ横文字にするのか理解に苦しむが、そういう取り組みが積極的になされる様になったことは歓迎すべき事柄だと思うし、今後見込まれる中古住宅市場の活性化に向けて大いに活用されることを望む。

他方、懸念される事項もある。ホームインスペクションを強力に推進しているのが、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会という団体だ。同団体は、独自の試験を課し、建築士資格の有無に因らず合格者には公認ホームインスペクターの称号を付与している。しかし、ここに大きな問題がある。

建築士法第21条には「建築士は、設計及び工事監理を行うほか、建築工事契約に関する事務、建築工事の指揮監督、建築物に関する調査又は鑑定及び建築物の建築に関する法令又は条例に基づく手続きの代理その他の業務を行う事が出来る。」とある。つまり、住宅診断は、明らかに建築士業務であり、建築士以外の者がそれを行う事は、同法に反するのだ。ただ、建築士法21条には罰則規定がない。そのため例え違反したとしても、罰せられることはない。これは、法の不備と言わざるを得ないし、この様な法の隙間を縫うような行為は、脱法行為である。

また、『適合証明技術者実務の手引き~平成22年度改訂版~』(発行:社団法人日本建築士事務所協会連合会)の第一章3-1「適合証明業務の重要性」には、「適合証明業務は、建築士法第21条に規定している建築物に関する調査または鑑定業務等に該当する業務です。~一部抜粋~」とある。類似の適合証明業務が建築士業務であるのに対し、ホームインスペクションが建築士業務でないという解釈は、道理に悖とる。

話は変わるが、手塚治虫の名作「ブラックジャック」をご存知だろう。周知の通り、ブラックジャックは、医師免許を持たない凄腕の外科医だ。金持ちや悪人には法外な報酬を要求するが、貧者や善人からは報酬を得ない。時には動物まで治療する。

ブラックジャックは、医師免許を持たない違法な存在である。しかし、その腕前の凄さは周知の事実だし、例え法外な報酬を支払ったとしても、命が助かれば御の字なのかもしれない。しかし、現実社会ではそうは行かない。例え腕が立つと言えども無免許は無免許。違法である。今から10年程前だったか。「カリスマ美容師の無免許騒動」があった。腕の立つカリスマと言え、わが国が法治国家である以上、法の下に平等なのである。

カリスマ美容師もブラックジャックも、その技術にはある種のお墨付きがあるが、建築士でないホームインスペクターは、十分にその技量が担保されているのだろうか?無免許の上、力量もないでは弱り目に祟り目である。

本人の名誉のために氏名は伏せるが、ある公認インスペクター2氏のブログの記載を拝見して、驚いた。ここでは仮にA氏とB氏としよう。A氏については、以前私の液状化に関するブログでも指摘したとおりである。氏は、液状化現象が地盤の圧密沈下を呼ぶような見解を示していた。液状化は、粒径の揃った砂質土で起こり易い現象である。一方、圧密沈下は、粘土に電気的に吸着した水分子が長時間圧力を受けることによって抜けて行く際に生じる現象である。つまり、全くの別物だ。

また、B氏のブログでは、「2001年の建築基準法改正以降もその改正を知らずに設計された建物が現に存在す」る旨の記載をしている。ここで、素朴な疑問が生じるのだが、建築基準法に合致しない建物に対して、住宅センター等が建築確認をするのだろうか?私の知る範囲ではその様なことは有り得ない。それに、2001年改正の4分の1算定法は、さほど難しい話ではないので、行政の指導の下すぐに周知されたものと理解している。

おそらく、A氏もB氏も、故意や過失でこのような記載をしたわけではないだろう。単純に無知だったのだと思う。だから、個人を責めるつもりは更々ない。ただもっとよく調べて公にして頂きたいと思う。なぜなら、両氏は“専門家”だからである。

この様に、“公認”とはいえ、知識不足経験不足は否めない。他方、建築士だからそれらを担保できるのかと問われると、心許ないのも事実である。これらを踏まえ、私からの提案をしたいと考える。

1,あくまでも住宅診断は建築士に限る。
法の精神に基づき、建築物の診断は建築士業務である旨、徹底する。国会は、同法の罰則規定なども検討する。

2,建築士に対する住宅診断の研修や講習を建築士会などを中心に行う。
既存のインフラを十分に活用する。建築士会は利権の絡んだ業界団体だという批判もあるが、建築士法などの趣旨からすると、同団体を弾力的に活用する事が望ましい。落下傘方式に別団体を立ち上げる手法は、少々稚拙であるものと考える。

3,研修を修了した者には、修了した旨が、消費者が分かりやすい様に、相応の称号などを付与する。
応急危険度判定士や耐震診断士の様に、分かりやすい名称が好ましい。また、誓約書の提出や、定期的な実務講習会も行い、誠実な運用を担保する。

4,3で付与された名称などを用いる場合でも、住宅診断の診断書等には、建築士である旨を顕示する。

いずれにせよ今後、760万戸ある空き屋の取扱いが社会問題となり、また、それらの流通が内需拡大の起爆剤となっていく事は、火を見るより明らかだ。その様な中、消費者の目から見て、誤解を招きやすい資格や検定が林立する事は、決して望ましいことではない。誰かが幸せになる世の中ではなく、みんなが幸せになる世の中の実現のために、皆が協力し努力する事が必須であろう。

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